FastQC環境構築編(Linux環境・Conda版)

RNA-seq
📚 この記事について
Conda を使って FastQC を導入し、コマンドから動かせる状態にするまでの手順です。
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📌 前提:Linux または macOS で、Miniconda / Miniforge のいずれかが導入済みであること

FastQC は Java で書かれた品質評価ツールです。配布サイトから ZIP を取得して展開する方法もありますが、本記事では Conda を使います。依存関係の解決と実行パスの設定をまとめて任せられるため、後続のツールを増やしていくときに管理が破綻しにくいからです。

1. なぜ Conda を使うのか


FastQC は単体で動くツールではなく、Java 実行環境を必要とします。手動で導入する場合、Java の入手、FastQC の展開、実行権限の付与、パスの設定を個別に行うことになります。Conda はこれを1コマンドにまとめます。

方式 依存関係 管理者権限 ツールを増やすとき
公式 ZIP を展開 Java を自分で用意 不要 ツールごとに手作業
apt / yum 自動 必要 バージョン選択が困難
Conda 自動 不要 同じ手順で追加できる

共用サーバーでは管理者権限を持てないことが多く、この点だけでも Conda を選ぶ理由になります。

💡 Bioconda とは
生命科学ソフトウェア専用の配布チャンネルです。2018年時点で 3000 を超えるパッケージが登録され、コミュニティによって維持されています(Grüning et al., Nature Methods, 2018)。FastQC もここから取得します。対応 OS は Linux と macOS で、Windows では WSL2 上の Linux から使います。

2. チャンネルを設定する


チャンネルは、Conda がパッケージを探しに行く配布元です。既定では Bioconda を見に行かないため、最初に追加します。

bash
# 依存解決の基盤となる conda-forge を先に、bioconda を後に追加する
conda config --add channels bioconda
conda config --add channels conda-forge

# 優先順位を厳格にして、チャンネル混在による依存の破綻を防ぐ
conda config --set channel_priority strict

--add は指定したチャンネルをリストの先頭に差し込みます。上の順で実行すると、優先順位は conda-forge、bioconda、defaults の順になります。これは Bioconda が公式に推奨している並びです。順序を逆にすると、bioconda が conda-forge より優先され、共通ライブラリの版が食い違って解決に失敗することがあります。

設定は次で確認できます。

bash
conda config --show channels

3. 専用の環境を作ってインストールする


base 環境に直接入れず、解析用の環境を分けます。ツールごとに要求する Python や Java の版が異なるため、まとめて入れると後から衝突します。環境を分けておけば、壊れたときにその環境だけ作り直せます。

bash
# rnaseq という名前の環境を作り、FastQC を入れる
conda create -n rnaseq fastqc

# 作った環境に入る
conda activate rnaseq

確認メッセージ Proceed ([y]/n)? が出たら y を入力します。既存の環境に追加したい場合は、その環境に入ってから conda install fastqc を実行します。

💡 解決が終わらないとき
Solving environment の表示が長く続く場合、依存解決の総当たりに時間がかかっています。conda の代わりに mamba(同じ操作を高速に行う実装)を使うか、環境を新規に作り直すと収束が早くなります。

4. 動作を確認する


bash
# バージョンが表示されればインストール成功
fastqc --version

# 実行ファイルの場所を確認(環境内を指していることを見る)
which fastqc

FastQC v0.12.1 のようにバージョンが返れば導入できています。which の出力が ~/miniconda3/envs/rnaseq/bin/fastqc のように環境内を指していれば、目的の環境の FastQC が呼ばれています。

実際の FASTQ ファイルで動かします。

bash
# 出力先を作ってから実行する(存在しないとエラーになる)
mkdir -p qc_result
fastqc sample.fastq.gz -o qc_result/

# 複数ファイルをまとめて、4並列で処理する
fastqc *.fastq.gz -o qc_result/ -t 4

qc_result/ に HTML レポートと ZIP が生成されます。レポートの読み方はクオリティチェック編で扱っています。

GUI を使う場合は引数なしで起動します。ただしサーバー上では画面転送の設定が必要になるため、コマンドラインでの実行を基本にしてください。

bash
fastqc

5. トラブルシューティング


症状 原因 対処
command not found: fastqc 環境に入っていない conda activate rnaseq を実行する
PackagesNotFoundError チャンネルが未設定 手順2をやり直す
GUI が起動しない Java が未導入 conda install openjdk を実行する
Skipping file ... と出て結果が空 ファイル名や拡張子が想定外 拡張子が .fastq / .fastq.gz か確認する
Specified output directory does not exist 出力先が未作成 mkdir -p で先に作る
Solving environment が終わらない 依存解決に時間がかかっている 環境を新規に作るか mamba を使う

6. 注意点


  • base 環境に入れない:base が壊れると Conda 全体の操作に影響します。解析用の環境を分けてください。
  • チャンネルの順序を守る:conda-forge が bioconda より優先される並びにします。逆にすると依存解決に失敗することがあります。
  • Windows では直接動かない:Bioconda は Linux と macOS が対象です。Windows では WSL2 上の Linux で作業します。
  • 環境名を記録しておく:解析を再現する際に、どの環境で何を実行したかが必要になります。conda env export で構成を書き出しておくと確実です。

まとめ


  • FastQC は Java を必要とするため、依存関係をまとめて解決できる Conda で導入する。
  • チャンネルは bioconda → conda-forge の順で追加し、優先順位を strict にする。
  • base ではなく解析用の環境を作ってインストールする。
  • 確認は fastqc --versionwhich fastqc の2つで行う。
  • 出力先ディレクトリは -o で指定する前に作成しておく。

この手順の先で必要になること


この手順どおりに進めれば FastQC は入りますが、「なぜチャンネルを追加するのか」「conda の仮想環境は何を切り分けているのか」「fastqc と打つだけでなぜ起動するのか」までは踏み込んでいません。ここが分からないまま進むと、次のツールで別のエラーが出たときに同じ場所でまた止まります。逆にここを一度きちんと通せば、以降のインストールはほぼ自力で解決できるようになります。

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参考文献


  • Grüning, B., Dale, R., Sjödin, A., Chapman, B. A., Rowe, J., Tomkins-Tinch, C. H., Valieris, R., & Köster, J. (2018). Bioconda: sustainable and comprehensive software distribution for the life sciences. Nature Methods, 15(7), 475–476. doi:10.1038/s41592-018-0046-7
  • Andrews, S. (2010). FastQC: A quality control tool for high throughput sequence data. Babraham Bioinformatics. https://www.bioinformatics.babraham.ac.uk/projects/fastqc/

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