scATAC-seq(single-cell ATAC-seq/核を使う場合は snATAC-seq)は、1細胞ごとに「ゲノムのどこが開いているか」を測る手法です。この記事では、解析の全体像を地図として示し、どの順番で何を行うのかを俯瞰します。
1. scATAC-seq とは何か
ATAC-seq は、開いたクロマチン(DNAが露出してアクセス可能になった領域)を検出する手法です。それを1細胞ごとに測るのが scATAC-seq。細胞ごとに「ゲノムのどこが開いているか」が分かります。
scRNA-seq が「どの遺伝子が働いているか(mRNA量)」を見るのに対し、scATAC は「どの遺伝子が働ける状態か」という制御の上流を見ます。両者は補い合う関係です。
DNAがタンパク質に巻き付いた構造のこと。びっしり巻かれた部分は「閉じて」いて遺伝子が働けず、ほどけて露出した部分は「開いた(アクセス可能な)」領域=遺伝子が働ける候補領域です。
2. 解析の全体マップ
scATAC 解析は大きく3ブロックです。前処理でデータを整え、アノテーションで細胞に名前を付け、下流解析で生物学的な問いに答えます。全体を1枚にまとめます。
各ブロックの中身(具体的なコードや手法)は、それぞれの記事に譲ります。この記事は地図に徹します。
3. 各ブロックの入口
前処理:生データ(フラグメント=Tn5酵素がゲノムを切って生じるDNA断片)からピーク(開いた領域)を検出し、細胞×ピーク行列を作ります。ATAC特有の品質管理(QC)指標や、RNAとは異なる次元削減(TF-IDF/LSI)を経てクラスタリングまで進めます。
→ scATAC-seq 前処理の全体像
アノテーション:できたクラスタに細胞型(T細胞・B細胞など)を付けます。RNAが無いので、遺伝子活性スコア(開閉から発現を推定)、RNA参照からのラベル転移、モチーフ解析などを使います。
→ scATAC-seq のアノテーション全体像
下流解析:細胞型ごとに「どの領域が開いているか」の差(差次的アクセシビリティ)や、ピーク同士の連結を調べます。さらに発展として遺伝子制御ネットワークやマルチオミクスへ広がります。
→ scATAC-seq 下流解析の全体像
4. ツールの方針
本サイトは Python系の SnapATAC2 を主軸に進めます。前処理からアノテーションまで一貫して扱え、深層学習にも繋げやすいためです。選定の理由は、三強(Signac・ArchR・SnapATAC2)を比較した別記事で詳しく解説しています。
→ scATAC-seq 解析ツールの選び方
まとめ
- scATAC は「ゲノムのどこが開いているか」を1細胞ごとに測る手法。
- 解析は 前処理 → アノテーション → 下流解析 の3ブロック。
- 本サイトは SnapATAC2(Python系)で進める。
関連記事
- scATAC-seq 解析ツールの選び方 ─ Signac・ArchR・SnapATAC2 を比較する
- scATAC-seq 前処理の全体像
- scATAC-seq のアノテーション全体像
- scATAC-seq 下流解析の全体像
参考文献
- Buenrostro, J. D., Giresi, P. G., Zaba, L. C., Chang, H. Y., & Greenleaf, W. J. (2013). Transposition of native chromatin for fast and sensitive epigenomic profiling of open chromatin, DNA-binding proteins and nucleosome position. Nature Methods, 10(12), 1213–1218. doi:10.1038/nmeth.2688
- Zhang, K., Zemke, N. R., Armand, E. J., & Ren, B. (2024). A fast, scalable and versatile tool for analysis of single-cell omics data. Nature Methods, 21(2), 217–227. doi:10.1038/s41592-023-02139-9


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