Claude Science からラボの計算機を使う ─ SSH でジョブを投げる

Claude
📚 この記事について
Claude Science に、SSH で届く計算機(ラボのワークステーションや HPC のログインノード)を登録し、解析ジョブを投げられるようにする手順です。データを動かさずに、大きな計算だけ外へ出せます。
📌 前提:Claude Science の導入(LinuxMacWindows・WSL2

Claude Science は既定では、動かしているパソコンの中で解析を実行します。軽い解析ならこれで足りますが、メモリが必要な処理や GPU を使うモデルは手元では回りません。

導入がまだの場合は、お使いの環境に合わせて LinuxMacWindows(WSL2) の各記事を先に済ませてください。

そこで、SSH で届く計算機を登録してジョブだけ外へ出す機能が用意されています。リモート側には Claude Science をインストールしません。既存の ~/.ssh/config をそのまま使い、鍵か ssh-agent で認証します。

1. 何がどこで動くのか


手順に入る前に役割分担を押さえておくと、後の注意点が理解しやすくなります。

図:手元のパソコンとリモート計算機の役割分担、およびジョブと結果の流れ
図:手元のパソコンとリモート計算機の役割分担、およびジョブと結果の流れ

会話・計画・図の作成は手元で行われ、重い計算だけがリモートで動きます。ジョブが終わると結果が手元のセッションに戻り、そのまま図にできます。

重要なのは、大きなデータを動かさずに済むことです。シーケンスデータがラボの計算機にあるなら、ジョブはそこで直接読み書きします。既定では約 100 MB を超えるファイルはリモートに残り、Claude はその場所だけを記録します。

💡 接続が切れても止まらない
ワークステーションではジョブが独立したプロセスとして動き、HPC では sbatch でスケジューラに渡されます。どちらの場合も接続が切れてもジョブは走り続けます。ノートパソコンを閉じて移動しても問題ありません。

2. 前提:SSH が通ること


先に、手元から目的の計算機へ普通に SSH で入れる状態にしておきます。

bash
# 鍵をまだ作っていない場合
ssh-keygen -t ed25519

# 公開鍵を相手側に登録する
ssh-copy-id user@192.168.1.50

# パスワードなしで入れることを確認する
ssh user@192.168.1.50
⚠️ Windows で WSL を使っている場合
WSL の ~/.ssh は Windows 側の設定とは別物です。導入は Claude Science を Windows に導入する を参照してください。Windows 側で鍵を作ってあっても、WSL の中で作り直す必要があります。ターミナルの基本操作は ターミナルの基本操作入門【Windows版】 を参照してください。

3. 手順① ~/.ssh/config に別名を書く


Claude Science は ~/.ssh/config の別名を読みます。アドレス・ユーザー名・ポート、そして踏み台を経由する場合の ProxyJump は、すべてこのファイルから取得されます。

text
# ~/.ssh/config

# ラボのワークステーション
Host lab
    HostName 192.168.1.50
    User user

# 踏み台を経由する場合
Host hpc
    HostName login.hpc.example.jp
    User user
    ProxyJump gateway

別名を書いておけば、以降は ssh lab だけで接続できます。この別名をそのまま Claude Science に登録します。

4. 手順② ホストを登録する


Settings > Compute > SSH hosts > Add SSH host を開き、~/.ssh/config の別名を選ぶか入力します。

ここでホストについての注記を書いておけます。使うパーティション、アカウントコード、読み込むモジュール、ソフトを入れてよいかどうか、といった内容です。Claude は最初のジョブを投げる前にこれを読みます。

ユーザー名・ポート・鍵ファイルを個別に上書きしたい場合は、Advanced から指定できます。指定が済んだら Add を押します。

💡 登録時に自動で環境が調べられる
ホストを追加すると読み取りのみの調査が走り、CPU 数・メモリ・GPU・CUDA ドライバ・conda / modules / Apptainer の有無・スクラッチ領域・sbatch があるかどうかが記録されます。SLURM のクラスタではパーティションも読み取られます。結果はホストの詳細ページに編集可能な注記として保存され、Probe から再実行できます。

5. 手順③ 作業領域と同時実行数を決める


ホストの詳細ページで、次の2つを設定します。

設定 内容
Scratch directory ジョブのスクリプトと入力が置かれる作業領域。SLURM では共有ファイルシステム上である必要がある
Concurrent job limit 同時に走らせるジョブ数の上限(既定は 100)
⚠️ 共有計算機では同時実行数を下げる
既定の 100 は、ラボで共有しているワークステーションには多すぎます。他の人の作業を圧迫しないよう、コア数に見合った数まで下げてください。HPC の場合も、所属機関の利用規約で上限が定められていることがあります。

6. ジョブを投げる


Claude がリモートでの実行を提案すると、Run this job on <host>? というカードが表示されます。実行されるコマンドとスクリプトがそこに出るので、内容を読んでから承認します。

承認の範囲は4段階から選べます。

  • Once — 今回のジョブだけ
  • This conversation — この会話の中では以降も許可
  • This project — このプロジェクト内で許可
  • Global — すべての場面で許可

承認すると、ジョブスクリプトと入力がスクラッチ領域の下のジョブ用ディレクトリにコピーされ、実行されます。終わると結果が手元のセッションに戻ります。

⚠️ ジョブはサンドボックスの外で動く
手元での実行はサンドボックスに閉じていますが、リモートのジョブはその外で、自分のアカウントとして動きます。そのアカウントが読み書きできるものすべてに手が届く状態です。最初は Once で1つずつ承認し、コマンドの内容を読む習慣をつけてください。共有計算機では、いきなり Global を選ばないことを勧めます。

⚠️ 既定のタイムアウトは30分
それより長い処理を投げる場合は、投入前に Claude へ伝えてください。アライメントや大規模なパイプラインは30分では終わりません。

7. ホストごとの作法を覚えさせる


ホストの詳細ページには Details というドキュメントがあり、Claude はここからそのホスト固有の指示を読みます。

書いておく内容は、環境の有効化方法、データやパッケージの置き場所、スケジューラの慣習といったものです。Claude は作業しながらこれを更新し、こちらからも随時編集できます。

たとえば、次のような内容を書いておくと初回から噛み合います。

text
# Details に書いておくとよい内容の例

conda は /opt/miniconda3 にある。source /opt/miniconda3/bin/activate で有効化する
解析用の環境名は scanpy-env
解析データは /data3/projects/ 以下。ここ以外には書き込まない
GPU は 1 枚のみ。同時に GPU ジョブを 2 つ走らせない
パッケージの新規インストールは事前に相談すること
💡 共有計算機では制約を先に書く
「ここ以外には書き込まない」「勝手にインストールしない」といった制約を最初に書いておくと、毎回の承認カードで確認する負担が減ります。研究室の共有機では、この記述が実質的な運用ルールになります。

8. 使いどころ


この機能が効くのは、次のような場合です。

  • 手元のメモリでは足りない解析:大きな AnnData を読み込む処理や、多検体の scRNA-seq 前処理scATAC-seq のピーク呼び出しなど
  • GPU が必要な処理scvi-tools による統合や、構造予測モデル
  • データが計算機側にある場合:シーケンスデータを移動させずに、その場で処理できる
  • 時間のかかるパイプライン:投入して接続を切っても走り続ける

逆に、データベースの横断検索や文献調査、図の調整は手元で完結するため、リモートを使う必要はありません。手順が定まっている作業を skill として登録しておくと、マルチオミクス解析 のような多段階の処理でも同じ手続きを再利用できます。

まとめ


  • SSH で届く計算機を登録すると、Claude Science から解析ジョブを投げられる。リモート側に Claude Science は導入しない。
  • 接続情報は ~/.ssh/config から読まれる。別名・ProxyJump を先に整えておく。
  • 登録は Settings > Compute > SSH hosts > Add SSH host。追加時に読み取りのみの調査が走り、CPU・メモリ・GPU・スケジューラの有無が記録される。
  • ワークステーションでは独立プロセス、SLURM では sbatch でジョブが走る。接続が切れても継続する。
  • 投入前に承認カードが出る。範囲は Once / This conversation / This project / Global の4段階。
  • リモートのジョブはサンドボックスの外で、自分のアカウントとして動く。コマンドを読んでから承認する。
  • 既定のタイムアウトは30分。長い処理は事前に伝える。
  • 結果は手元に戻るが、約 100 MB を超えるファイルはリモートに残り、場所だけが記録される。
  • ホストごとの作法は Details ドキュメントに書いておくと、初回から噛み合う。

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参考文献


  • Anthropic. (2026). Claude Science documentation: Remote compute clusters. https://claude.com/docs/claude-science/remote-compute-clusters
  • Anthropic. (2026, June 30). Claude Science, an AI workbench for scientists. https://www.anthropic.com/news/claude-science-ai-workbench
  • Anthropic. (2026). Claude Science documentation: Overview and requirements. https://claude.com/docs/claude-science/overview

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