scATAC-seq(single-cell ATAC-seq/核を使う場合は snATAC-seq)の co-accessibility では、細胞をまたいで一緒に開くピーク対を繋ぎます。ここでは仕組み・ツール・注意点と、マルチオミクスとの境界を押さえます。
1. co-accessibility とは
co-accessibility(共アクセシビリティ)は、細胞をまたいで一緒に開いたり閉じたりするピーク対を見つける解析です。2つのピークが多くの細胞で同時に開いていれば、それらは機能的に繋がっている可能性が高い、と考えます。
最大の狙いは、遠くにあるエンハンサー(遺伝子から離れた制御領域)と、その標的遺伝子のプロモーターを結びつけることです。ゲノム上の距離が近い=制御している、とは限りません。「一緒に開く」という証拠で、線形の位置では分からない制御の配線を推定します。しかもRNAを使わず ATAC 単独で完結します。
2. どう計算するか
細胞ごとの開閉がどれだけ連動しているか(共分散・相関)を、距離ペナルティ付きで評価します(近い領域ほど繋がりやすい、という前提)。ATACは非常に疎なので、似た細胞をまとめたメタセルで安定化してから計算します。
繋がったピークのまとまりを CCAN(共アクセシブルネットワーク)と呼びます。
3. ツール(R定番 ⇄ Python)
ここは、SnapATAC2 に機能が無い数少ない工程です。定番は R の Cicero で、Python 版は新しめです。手法の理解を優先し、実装は用途で選びます。
| ツール | 言語 | 特徴 |
|---|---|---|
| Cicero | R | 定番。graphical lasso + 距離ペナルティ + メタセル + CCAN(Pliner et al., 2018) |
| CIRCE | Python | Cicero と同じ手法を Python で再実装・高速化した新しめのツール |
| pycisTopic | Python | トピックモデル(LDA)で共アクセシブル領域の集合を得る別アプローチ |
⚠️ SnapATAC2 では完結しない工程
前処理〜アノテーションは SnapATAC2 で一貫できましたが、co-accessibility は SnapATAC2 に無いため、外部ツールに出ます。Python で通したいなら CIRCE か pycisTopic、実績重視なら定番の Cicero(R) です。
前処理〜アノテーションは SnapATAC2 で一貫できましたが、co-accessibility は SnapATAC2 に無いため、外部ツールに出ます。Python で通したいなら CIRCE か pycisTopic、実績重視なら定番の Cicero(R) です。
4. コード:Cicero(定番の3ステップ)
Cicero は3ステップです。メタセル化 → co-accessibility 計算 → CCAN 抽出(Pliner et al., Molecular Cell, 2018)。Python なら CIRCE が同じ手順を再現します。
r
# R / Cicero(co-accessibility の定番)
library(cicero)
# 1. メタセル化したデータを作る(スパース対策)
cicero_cds <- make_cicero_cds(input_cds, reduced_coordinates=umap_coords)
# 2. 距離を考慮して co-accessibility を計算
conns <- run_cicero(cicero_cds, genomic_coords=genome_coords)
# 3. CCAN(繋がったピークのまとまり)を抽出
ccans <- generate_ccans(conns)
5. 注意点
- 相関 ≠ 物理的接触・因果:co-accessibility は統計的な関連です。確定には Hi-C など別の証拠で裏取りします。
- メタセルに依存:スパース対策のメタセルの作り方で結果が変わります。
- 近距離(cis)中心:距離ペナルティにより、一定の窓(例:500kb)内の局所的な繋がりを見ます。ゲノム全体の任意リンクではありません。
💡 「発現」と結ぶのはマルチオミクス(別シリーズ)
co-accessibility はピーク同士(peak ↔ peak)を ATAC 単独で繋ぎます。近傍の遺伝子アノテーションと結びつけるところまでは ATAC で可能です。ただし、ピークの開閉を実測の遺伝子発現と対応づける(peak ↔ 遺伝子発現)には RNA が必要で、これは本サイトのマルチオミクス・シリーズで扱います。
co-accessibility はピーク同士(peak ↔ peak)を ATAC 単独で繋ぎます。近傍の遺伝子アノテーションと結びつけるところまでは ATAC で可能です。ただし、ピークの開閉を実測の遺伝子発現と対応づける(peak ↔ 遺伝子発現)には RNA が必要で、これは本サイトのマルチオミクス・シリーズで扱います。
まとめ
- co-accessibility=一緒に開くピーク対を繋ぎ、遠位エンハンサーと遺伝子を結ぶ(ATAC単独)。
- 距離ペナルティ+メタセルで計算し、まとまりを CCAN として得る。
- 定番は Cicero(R)、Python は CIRCE / pycisTopic。発現と結ぶのはマルチオミクス。
💡 scATAC 単独シリーズ 完結
前処理 → アノテーション → 下流解析まで、これで scATAC-seq 単独の解析シリーズが一通り揃いました。次のステップは、RNA と統合するマルチオミクス・シリーズ(WNN・MultiVI、ピーク-遺伝子リンク、GRN 推論など)です。
前処理 → アノテーション → 下流解析まで、これで scATAC-seq 単独の解析シリーズが一通り揃いました。次のステップは、RNA と統合するマルチオミクス・シリーズ(WNN・MultiVI、ピーク-遺伝子リンク、GRN 推論など)です。
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参考文献
- Pliner, H. A., Packer, J. S., McFaline-Figueroa, J. L., et al. (2018). Cicero Predicts cis-Regulatory DNA Interactions from Single-Cell Chromatin Accessibility Data. Molecular Cell, 71(5), 858–871. doi:10.1016/j.molcel.2018.06.044
- Zhang, K., Zemke, N. R., Armand, E. J., & Ren, B. (2024). A fast, scalable and versatile tool for analysis of single-cell omics data. Nature Methods, 21(2), 217–227. doi:10.1038/s41592-023-02139-9


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