scATAC-seq(single-cell ATAC-seq/核を使う場合は snATAC-seq)のアノテーションは、クラスタに細胞型の名前を付ける工程です。RNAが無いという ATAC 特有の難しさと、それを越える3つのルートを俯瞰します。
1. ゴールと、ATACならではの難しさ
アノテーションのゴールは、前処理で得たクラスタに細胞型の名前(T細胞・B細胞…)を付けることです。
scRNA-seq なら、既知のマーカー遺伝子の発現を見れば判断できます。ところが scATAC は発現を直接測っていません。測っているのは「どこが開いているか」です。そのためマーカー遺伝子がそのままでは使えない——ここがATACのアノテーション最大の難所です。
2. アノテーションの地図(3ルート)
この難所を越える方法は大きく3つあります。①でRNA風の土俵に持ち込む、②でRNAの注釈を借りる、③で転写因子から特徴づける、というイメージです。
3. 各ルートの入口
① 遺伝子活性スコア:遺伝子まわりの開閉から発現を推定し、疑似的な「細胞×遺伝子」を作ります。これで scRNA-seq と同じマーカー・同じ作法で手動アノテーションできます(SnapATAC2 では make_gene_matrix)。最も基本のルートです。
→ 遺伝子活性スコアでアノテーション
② ラベル転移:すでに細胞型が付いたRNA参照データから、対応する細胞へ型を自動で移します(scANVI などを使用)。手作業を減らせます。
→ RNA参照からのラベル転移
③ モチーフ・TF活性:型を付けるというより、その細胞型を特徴づける転写因子を明らかにします。①②を補完する位置づけです。
→ モチーフ・TF活性解析
4. 付けた細胞型は必ず検証する
⚠️ マーカーを UMAP に投影して裏を取る
細胞型を付けたら、根拠にしたマーカー(遺伝子活性)を UMAP に投影して、次を確認します。(1) そのマーカーが目的のクラスタだけに出ているか(他クラスタにも出ていないか)、(2) クラスタ内の全細胞に出ているか・一部だけか・低くないか、(3) 複数クラスタにまたがって出ていないか。もし組織学的にありえない細胞型にマーカーが出ているなら、QC不良やダブレット混入を疑い、前処理を見直します。
細胞型を付けたら、根拠にしたマーカー(遺伝子活性)を UMAP に投影して、次を確認します。(1) そのマーカーが目的のクラスタだけに出ているか(他クラスタにも出ていないか)、(2) クラスタ内の全細胞に出ているか・一部だけか・低くないか、(3) 複数クラスタにまたがって出ていないか。もし組織学的にありえない細胞型にマーカーが出ているなら、QC不良やダブレット混入を疑い、前処理を見直します。
5. 進め方の推奨
- まず ① 遺伝子活性スコアで手動アノテーション、または ② ラベル転移で自動化。
- ③ モチーフ・TF活性は、決めた細胞型の特徴づけ・解釈に使う。
- SnapATAC2 で一貫して進められます(RNA参照との統合は scANVI)。
まとめ
- ATACは発現を直接測らないので、マーカーがそのまま使えないのが難所。
- 3ルート=①遺伝子活性スコア/②ラベル転移/③モチーフ。まず①か②で名前を付け、③で特徴づけ。
- 付けた型は必ずマーカーをUMAPに投影して検証する。
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参考文献
- Zhang, K., Zemke, N. R., Armand, E. J., & Ren, B. (2024). A fast, scalable and versatile tool for analysis of single-cell omics data. Nature Methods, 21(2), 217–227. doi:10.1038/s41592-023-02139-9
- Stuart, T., Srivastava, A., Madad, S., Lareau, C. A., & Satija, R. (2021). Single-cell chromatin state analysis with Signac. Nature Methods, 18(11), 1333–1341. doi:10.1038/s41592-021-01282-5


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