Claude Science を Linux に導入する ─ ダウンロードからサインインまで

Claude
📚 この記事について
Anthropic が2026年6月に公開した研究者向けアプリ「Claude Science」を、Linux 環境で使えるようにするまでの手順書です。各手順には、筆者が実際に詰まった箇所とその抜け方を併記しています。
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Claude Science は、文献検索・データベース参照・コード実行・作図までを1つの環境にまとめた研究者向けのアプリです。2026年6月30日にベータ公開され、macOS と Linux で動作します。

この記事では、Linux でダウンロードからサインインまでを通しで解説します。要件を満たした環境なら5分ほどで終わる作業ですが、環境によっては途中で止まることがあります。そこで各手順に、筆者の環境で実際に出たエラーとその読み解き方を 「筆者の環境では」 として添えました。同じ症状に当たったときの手がかりとして使ってください。

1. Claude Science とは何か


これまで研究者は、文献を探すブラウザ、コードを書く Jupyter、計算を投げるクラスタの端末、というように複数のツールを行き来していました。Claude Science はこれらを1つの作業環境にまとめ、自然言語での指示から解析の実行までを一続きで扱えるようにしたアプリです。

バイオインフォマティクス的に押さえておきたいのは次の3点です。

  • 60を超える公開データベースに接続済み:Ensembl・UCSC・UniProt・GO・Reactome・gnomAD・ClinVar・GTEx・ENCODE・JASPAR・PDB・AlphaFold・GEO などに、各データベースの問い合わせ言語を覚えずに自然言語でアクセスできます。
  • 解析手法が skill として同梱:AlphaFold2・OpenFold3・ESM-2・Evo 2・Borzoi・scGPT・scvi-tools などが呼び出せる状態で用意されています。
  • 出力にコードと実行環境が紐づく:生成された図には、それを作ったコード・環境・作成手順の説明・全メッセージ履歴が付随します。数か月後に自分の図を再現・検証できる状態が保たれます。
💡 MCP との関係
接続部分の仕組みは MCP(Model Context Protocol)です。MCP そのものについては MCPとは何かバイオインフォ系MCPサーバー完全ガイド を参照してください。DBCLS の生命科学データベースを扱う TogoMCP も同じ枠組みです。

2. 導入前に確認する3点


Linux 版は「インストーラを実行するだけ」と案内されていますが、その裏で3つの前提を要求します。先に確認しておくと手戻りがありません。

図:Claude Science を Linux に導入する前に確認する3点と、その後の起動フロー
図:Claude Science を Linux に導入する前に確認する3点と、その後の起動フロー

確認は次のコマンドで行います。

bash
# OS とライブラリのバージョン
lsb_release -a
ldd --version | head -1

# サンドボックス(コード実行の隔離)に使う道具。0.8.0 以上が必要
bwrap --version

# ホーム領域の空き。初回セットアップで約 5 GB 使う
df -h ~
💡 サンドボックスとは
プログラムを隔離された領域の中だけで動かす仕組みです。Claude Science は生成したコードをこの中で実行するため、解析対象のファイル以外に手が届かないよう守られます。この仕組みは省略できず、条件を満たさない場合はコードを隔離なしで動かすのではなく実行を拒否する設計になっています。

3. 手順① インストーラで導入する


要件を満たしていれば、公式のインストーラスクリプトを取得して実行します。スクリプトは最新版をダウンロードしてチェックサムを検証し、claude-science コマンドを ~/.local/bin に配置します。

公式ドキュメントに記載されているのは、次の1行です。

bash
# 取得してそのまま実行する(公式ドキュメント記載の形)
curl -fsSL https://claude.ai/install-claude-science.sh | bash
💡 中身を確認してから実行する方が安全
上の書き方は、取得したスクリプトを確認しないまま実行します。配布元を信頼する前提なら問題ありませんが、何をするスクリプトかを読んでから実行する方が確実です。その場合は次のように、いったんファイルに保存します。
bash
# 1. スクリプトをファイルに保存する
curl -fsSL https://claude.ai/install-claude-science.sh -o install-claude-science.sh

# 2. 中身を読む(q で終了)
less install-claude-science.sh

# 3. 実行する
bash install-claude-science.sh

インストーラが終わると、実行ファイルの置き場所が表示されます。~/.local/bin が PATH に入っていない場合は、案内に従って追加してください。

bash
# PATH を通してから動作確認
export PATH="$HOME/.local/bin:$PATH"
claude-science --version
⚠️ 筆者の環境では:インストーラがここで停止した
実行すると次の2行が出て止まりました。option --retry-all-errors: is unknown
failed to read the 'stable' release pointer (got unexpected content).

2行目は「サービスに到達できない」「地域で未提供」と読めますが、そうではありません。1行目が原因で、2行目はその結果です。インストーラが使う --retry-all-errors というオプションは 2020年6月公開の 7.71.0 で追加されたもので、筆者の環境のダウンロードツールは 7.68.0 でした。オプションが認識されずダウンロードが失敗し、空の内容が返ったためにリリース情報の読み取りに失敗した、という流れです。

💡 エラーメッセージを読む順番
ネットワーク系の文言が出たときは、その直前の行を先に疑うのが原則です。手元のツールが古くて要求を満たせなかっただけ、というケースが少なくありません。ここでプロキシやファイアウォールを調べ始めると、時間を大きく失います。この症状に当たった場合は、次の手順②に進んでください。

4. 手順② バイナリを直接取得する(インストーラが通らない場合)


インストーラは配置とチェックサム検証を代行するだけなので、本体を直接取得しても導入できます。公開されているバイナリを、次のコマンドで取得します。約 150 MB あります。

bash
# 本体を直接取得する
curl -L -o claude-science https://downloads.claude.ai/claude-science/latest/linux-x64

ブラウザで同じ URL を開いて保存しても構いません。取得できたら、次の手順③で配置します。

⚠️ この方法の代償
インストーラを経由しないため、更新が自動で流れてきません。新しい版が出たら同じ手順で取り直す必要があります。手順①が通る環境なら、そちらを使ってください。

5. 手順③ 配置と PATH を整える


取得したファイルに実行権限を付け、~/.local/bin に置きます。取得した場所でそのまま実行せず、最初からここに配置することが重要です。理由はこの節の後半で説明します。

bash
# 配置して実行権限を付ける
mkdir -p ~/.local/bin
mv ./claude-science ~/.local/bin/
chmod +x ~/.local/bin/claude-science

# PATH を通して確認
export PATH="$HOME/.local/bin:$PATH"
which claude-science   # ~/.local/bin/claude-science と出れば成功
💡 PATH とは
コマンド名だけで実行できるようにするため、シェルが実行ファイルを探しに行くディレクトリの一覧です。設定を毎回のログインに引き継ぐには、上の export 行を ~/.bashrc に追記します。同様の環境構築の考え方は FastQC環境構築編(Linux環境・Conda版) でも扱っています。
⚠️ 筆者の環境では:その場で実行して警告が出た
取得したファイルをその場で ./claude-science として起動したところ、起動自体は成功したものの「このプロセスを停止コマンドで止められない」という趣旨の警告が出ました。Claude Science は、動いているプロセスが本当に自分のデーモンかを起動時のコマンドラインの文字列で判定しています。./ を付けた起動のしかたはその判定に一致しないため、停止コマンドが効かなくなります。上のように PATH 上に置いてコマンド名だけで起動すれば、この警告は出ません。

6. 手順④ 起動してサインインする


デーモンをバックグラウンドで起動し、状態を確認してから、ログイン用のリンクを発行します。この順番が重要です。

bash
# 1. バックグラウンドで起動
claude-science serve --no-browser --detached

# 2. 動いていることを確認
claude-science status

# 3. ログイン用のワンタイムリンクを発行
claude-science url

発行されるリンクは1回限りの使い捨てで、約3分で失効します。デーモンが動いてさえいれば claude-science url は何度でも発行できるので、ブラウザを開く準備ができてから発行する運用にすると、時間切れに追われません。

⚠️ 筆者の環境では:リンク発行時に「デーモンが動いていない」と返された
オプションを付けずに起動していたためです。その場合はフォアグラウンドで動くため、端末を閉じる・SSH が切れる・Ctrl+C を押す、のいずれでもデーモンごと終了します。リンク発行コマンドは動いているデーモンに対して新しいリンクを出すものなので、プロセスがなければ何も発行できません。上の --detached を付けた起動に切り替えると解決します。

停止とログ確認は次のとおりです。

bash
claude-science status   # 稼働状況(pid・port・version)
claude-science stop     # 停止

7. 導入後に確認しておくこと


サインインできたら、次の2点を早めに確認しておくと安心です。

  • コード実行が通るか:簡単な計算を1つ実行させてみます。コード実行はサンドボックス内で行われるため、手順②で確認した bubblewrap が条件を満たしていないとここで止まります。起動できたことと、コードが動くことは別に確認が必要です。
  • データベース接続が読み込まれているか:起動ログに読み込み失敗が並ぶことがあります。初回起動時は内部データベースの処理が集中して時間切れになることがあるため、一度停止して再起動すると解消する場合があります。
💡 手元のパイプラインを登録できる
既存の解析手順を skill として登録しておくと、以降のセッションが自動的に引き継ぎます。scRNA-seq の前処理scATAC-seq 解析マルチオミクス解析 のように手順が定まっている作業ほど、登録しておく価値があります。

まとめ


  • Claude Science は、文献・データベース・コード実行・作図を1つにまとめた研究者向けアプリで、macOS と Linux でベータ公開されている。
  • 導入前に確認するのは3点:x64 かつ glibc ベースで空き 5 GB、ダウンロードツール 7.71.0 以上、bubblewrap 0.8.0 以上。
  • インストーラが古いダウンロードツールで止まる場合は、公開バイナリを直接取得すれば導入できる。ただし自動更新は効かなくなる。
  • 本体は ~/.local/bin に置き、./ を付けずコマンド名で起動する。停止コマンドが効くようにするため。
  • 起動は serve --no-browser --detached でバックグラウンド化し、status で確認してから url でリンクを発行する。
  • 起動できてもコード実行が通るとは限らないため、簡単な計算を1つ通して確認しておく。

関連記事


参考文献


  • Anthropic. (2026, June 30). Claude Science, an AI workbench for scientists, is now available. https://www.anthropic.com/news/claude-science-ai-workbench
  • Anthropic. (2026). Claude Science documentation: Get started. https://claude.com/docs/claude-science/get-started
  • Anthropic. (2026). Claude Science documentation: Overview and requirements. https://claude.com/docs/claude-science/overview
  • Anthropic. (2026). Claude Science documentation: Connectors and skills. https://claude.com/docs/claude-science/connectors-and-skills
  • Ashuach, T., Reidenbach, D. A., Gayoso, A., & Yosef, N. (2022). PeakVI: A deep generative model for single-cell chromatin accessibility analysis. Cell Reports Methods, 2(3), 100182. doi:10.1016/j.crmeth.2022.100182
  • Wolf, F. A., Angerer, P., & Theis, F. J. (2018). SCANPY: large-scale single-cell gene expression data analysis. Genome Biology, 19, 15. doi:10.1186/s13059-017-1382-0

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